2013年11月28日木曜日

出張手術をしてきました。

2013年11月28日 溝上達也
以前一緒に仕事をしていた後輩から手術の依頼があり行ってきました。右内頚動脈閉塞の患者さんで、脳血流検査(SPECT)にて右大脳半球に広範囲脳虚血が確認され、放置すれば脳梗塞再発のリスクが高い状態でした。手術は頭皮を養っている浅側頭動脈を中大脳動脈(脳動脈)に吻合する浅側頭動脈ー中大脳動脈吻合術を施行しました。2箇所で血管吻合を行い、1箇所は後輩に施行してもらいました。このバイパス術により頭蓋外血管から脳血管へ不足分の血流が供給され今後の脳梗塞予防効果が得られたと判断されました。
脳梗塞予防は主に内科的治療(薬剤による治療)ですが、症例によっては内科的治療に加え上記のような外科的治療が効果的な症例もあります。当院では適応患者さまには充分に説明し承諾されたならば積極的外科的予防治療を行っています。

今回でこの病院での手術は二回目ですが、慣れた道具での手術は望ましく写真の手術器具を持参しました。それぞれの施設で特徴があり、当院でも取りたい器具の発見もありました。


学会シーズンの秋

秋は学会シーズンです。アップが遅れていたのでまとめて報告します。(溝上達也)
2013年9月7日 中国四国脳血管内治療研究会 (岡山)

「経動脈的コイル塞栓術を行った特発性直接型内頚動脈海綿静脈洞瘻の一例」を発表しました。専門外の人には題名たけではなんのことやら・・ですが!
頭蓋底部内頚動脈(海綿静脈洞部)に発生した動脈瘤が破裂すると「特発性直接型内頚動脈海綿静脈洞瘻」となり眼球突出、結膜充血が突然生じ、放置すると失明したり脳出血を生じることもあり早期の治療が必要となります。頭蓋底部の骨に囲まれた部位の病変であり、開頭による治療は非常に困難でありカテーテルを使用した血管内治療が有用です。今回経験した症例は3Dイメージを駆使して破裂部位を同定することで最小限のコイルで塞栓術が可能でした。(溝上)
2013年9月21日  広島脳血管内治療フォーラム(広島)
「CFD解析による未破裂脳動脈瘤における菲薄部の特徴ー脳動脈瘤コイル塞栓術での役割」脳動脈瘤は破裂するとくも膜下出血となり重篤な後遺症が残るリスクがある疾患です。破裂の予防治療として、未破裂脳動脈瘤に対するコイル塞栓術、クリッピング術があります。クリッピング術は開頭し直視下で動脈瘤の薄く破裂しそうな部位を確認しクリッピングが可能ですが、コイル塞栓術はX線透視下での治療であり、実際の菲薄部の確認はできません。そこで最近注目されているcomputational fluid dynamics(CFD)で解析を行い、その特徴を検討することでコイル塞栓術前でも菲薄部の予測はある程度可能である結果が得られました。(溝上)
2013年10月11日  PHOENICS  ユーザーカンファレンス(東京)
上記CFD解析は特殊な解析ソフトを用いで工学系で多く使用されています。今回我々が使用したソフトはCFD解析の老舗である”PHOENICS”です。POHENICSを開発販売しているCHAM社から我々の研究が注目され、工学系を含めた全国カンファレンスでのプレゼンテーションを依頼されました。医学でもCDF解析が注目されていることや今回解析した脳動脈瘤の治療や解析結果を報告しました。(溝上)
2013年10月18日 第77回日本脳神経外科学会総会(横浜)
毎年開催される脳神経外科で最大規模の学会です。今回は「新生児期発症水頭症に対する脳室腹腔シャント術後機能不全の検討」を報告しまいた。当院では広島県での周産期医療の中核を担っており新生児の脳疾患症例も他施設に比較して多く経験します。新生児期の水頭症(髄液の流れ、吸収障害により脳室に髄液が貯溜してしまう疾患)は小児期や成人例のそれと比較して難治例が多く、その特徴を理解し3次元画像での術前シミュレーションや内視鏡併用による治療などが必要となることを報告しました。(溝上)
2013年11月10日 広島医学会総会(広島)
年一回開催される広島県医師会主催の学会です。多岐にわたる分野から専門医の立場でプレゼンテーションが行われます。脳神経外科領域でもポスター及びビデオセッションがあり、「未破裂大型中大脳動脈瘤に対するクリッピング術」で手術ビデオを供覧しながらプレゼンテーションを行いまいした。脳動脈瘤の治療はカテーテル治療であるコイル塞栓術と開頭して行うコイル塞栓術がありますが、大きな動脈瘤はコイル塞栓術が困難である症例が多く、その場合開頭クリッピング術が必要となります。大きな動脈瘤は破裂率も高く放置する危険性も高くなりますが、クリッピングでの合併症率も高くなり、それ故術前の詳細なシミュレーション及び術中のモニタリングなどが重要であることを報告しました。(溝上)
2013年11月1日 Hiroshima Penumbra Seminar (広島)
脳梗塞で早期に再潅流すれば症状は劇的に改善することが多く、できるだけ早い入院加療が重要です。Penumbra(ペナンブラ)とは脳機能は停止しているが早期の再潅流治療で脳梗塞にならず機能も改善する領域のことです。これを商品名にしている血栓回収デバイス(カテーテルの一種)があり、このデバイスの使用経験と留意点を報告しました。(溝上)
2013年11月22日 第29回日本脳神経血管内治療学会学術総会(新潟)
血管内治療はカテーテルを使用した頭部を切らず血管の中から病変を治療するです。脳神経外科領域でも急速にこの分野は発展しつつあります。脳神経領域でもっとも多く参加のある脳神経血管内治療の全国学会ですが、今回「CFD解析による未破裂脳動脈瘤における菲薄部の特徴ー脳動脈瘤コイル塞栓術での役割」の内容(前記あり)で当院での先進的診断について発表しました。(溝上)

今年残りの学会は12/7中国四国脳神経外科学会、12/14広島脳血管内治療研究会と続きます。


2013年11月21日木曜日

雑誌『脳卒中の外科』に論文「経過観察中にくも膜下出血を発症した未破裂脳動脈瘤症例の臨床的検討」が掲載されました

脳卒中の外科(第41巻5号2013)
ポイントは3つ.
①対象の14症例中5例(35%)が発見後1年以内に破裂しており,発見から短い期間での破裂が少なくない.
②前交通動脈瘤5例中4例が発見時の大きさが3mm以下.
③破裂時の形態が評価できた6例全例でブレブが認められた.

大規模臨床試験のUCAS Japanや5mm以下の動脈瘤を追跡したSUAVe studyでも同様の結果が出ています.

①と③から発見後早期は3ヶ月後フォローアップなど検査を密にすべきと思われました.また②から前交通動脈瘤ではかなり小さいものも注意して追跡していく必要があると思われました.

登録型の前向き研究でないのが痛いところですが今後も症例を集積していきたいと思っています.

なお本号はまだですが発刊後しばらくすると脳卒中の外科のホームページからfree journalで閲覧できるようになります(J-STAGEで).もしよろしければ御一読ください.

機関紙「脳卒中の外科」 http://nsg.med.tohoku.ac.jp/jsscs/paper.html

籬 拓郎

2013年11月12日火曜日

11月は落合先生が研修に来てくれています.

11月は落合先生が研修に来てくれています.
脳外科の研修はもう4回目で完全に即戦力です.
来年度には広島大学脳神経外科に入局してくれることなっている期待の星です.